公式サイト 天竺熱風録 6巻 感想 レビュー 考察 画像 ネタバレ
 田中芳樹、伊藤勢 これまでの感想はこちら 前回はこちら
王玄策。インドと中国を、3往復もした男

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好きに想え異邦人。言い放った“敗者”が印象的
 史書が、己を敗者・犯罪者と刻もうと
 彼は、これから死ぬのです
 何ら関係ない

 彼自身の胸にある理想に、傷などつかない!

グラサンお前かい!録
 第2巻、天竺は己がどう思ったかを大切にする
 彼の最期は、誰よりインド人らしかった
 誇り高いと私は思う

 ラスト「日本の足跡」で刻むのも美しかった!

 国際交渉が軸なのも面白かった!

天竺熱風録【最終回】感想


 第41話「その勝利を『利』とするか」
 第42話「アレクサンドロスのペテン師」
 第43話「最も単純明快な現実」
 第44話「素人の政治ごっこ」
 第45話「アルダナリーシュヴァラ」
 第46話「好きに想え異邦人」
 第47話「連合軍、解散」
 第48話「王玄策、帰唐」
 第49話「あの二人は帰れなかった」
 第50話「西暦658年 長安」
 第51話「後世の者は誰も知らない【最終回】」
 田中芳樹&伊藤勢 あとがき
 これまでの感想
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※公式サブタイなし。便宜名です。

あらすじ
また縁あれば…、少しずつ別れてゆく仲間達

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 ラトナ&ロンツォン、両将軍もホント良いキャラ
 
あらすじ
 七世紀、連合軍はクマーラ王を宥め王都に迫る
 だが、アルダナリーシュヴァラが掌握し
 王城は徹底抗戦を唱えた

 幸い民と、ヴィマル王子の蜂起で乱は終結

 事態は収拾され
 犠牲を払うも、玄策は唐に戻る 

 やがて658年3月、三度目の天竺行が実施

 王玄策はいつどこでどのように死んだか

 後世の者は誰も知らない【完】

第41話
寡兵にして、マガダ軍を抑えた『連合軍』だが

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 玄策の「ハッタリ」が、嘘から出た真に!

第41話「その勝利を『利』とするか」
 悪王アルジュナを捕えて、一件落着と思いきや
 カーマルーパ王、クマーラの軍勢が到来
 玄策に誘いをかけます

 この機に、マガダ国を奪ってしまえ!

 このクマーラ王
 曰く、「三蔵法師を手厚く保護した」人物

 しかし彼を攫ったり、当時の王に謝ったり

 まあとかく、得体の知れない人だそうな

第42話
この「誘い」、アレクサンドロスに因んだ故事

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 真意を看破、しかしクマーラの迫力たるや!

第42話「信頼に応えねば」
 この「大虎」こそ、矮躯なクマーラの本質か
 彼は、本気で奪えといったんじゃない
 玄策を利用しようとした

 かつて同じように、天竺統一した王ののように

 インド、天竺征服を図ったアレクサンドロス
 征服王イスカンダルの協力者

 協力し、「利」をかっさらった統一王!

 玄策=征服王なら、クマーラは統一王

 玄策を利用し、国を奪おうって肚!

自分は、“王妹殿下の信頼”に応えねばならない

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 行動は真摯、頭は回る! 玄策を気に入った

クマーラ王、呵呵大笑
 玄策は、あくまで仲間を助ける為に行動しただけ
 だからこそ、王妹殿下も力を貸した
 欲を出しちゃいけない

 王妹の信頼を足蹴にしたら、ペテン師と同じ

 これを行動の軸とし
 自分は、“天竺の自浄作用の一部”と解釈

 玄策自身こそ、天竺改善に“使われている”

 それを理解せず、欲をかけば破滅だけ

 理解するクマーラ王も深い…

玄策、命を賭して「両将軍」に頼み込む!

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 うちの腹黒、ネパール王の認識ィ!

玄策嘆願
 クマーラ王は納得するも、問題は連合軍でした
 彼らは、あくまで「得する為」に参加
 玄策とは違う…
 が!

 ネパール王が腹黒で、本当に良かった…

 腹黒王も弁えており
 新政権を、敵に回すなと厳禁してた!

 問題は、“この機に動き出す輩”が多い事!

 そして敵城自体が、難攻不落な事ね!

第43話
玄策が目を背けていた、最も単純明快な現実

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 しかし立った! 民が立った!! 立てよ国民!

第43話「最も単純明快な」
 さて玄策一行ですが、まさかの開門拒否!
 王妃、夫をダイナミックに見捨て
 死ぬなら死ねと明言
 死なば死ね!

 むしろ殺すはこっち! と人質オープン!!|

 いやあシンプルです!
 たかが八千の軍、“城攻めは出来ない”現実!!

 王妃が快楽堕ちしてたのが、ここで活きる!

 悪王アルジュナ、かわいそう!

第44話
愚民を殺せ! アルダナリーシュヴァラは唆すが

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 自ら「人質」となってくれた王子、だが

第44話「政治ごっこ」
 元々、賢王統治下だった王都は民が立った!
 国を滅ぼすのは、悪行ではない
 統治者への沈黙だと

 賢明な王子、ヴィマルの自己犠牲も光る!

 兵士も「国民」寄りで
 内心では、反発してるのも面白い

 何を守るべきか、前提がある兵は尊い…

 が、アルダナリーシュヴァラが乱入も

ヴィマル王子、勇気の「開門」宣言! また

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)ナーラーヤナ・スヴァーミン
 素人の政治ごっこは ほどほどにしとかんかい
 アナング・プジャリの者よ…


 なまじ
 意識の純粋な素人権力者は
 時にタチが悪い

 原理を妄信し
 独善排他に陥り
 恐怖で人々を縛ろうとしよる


 力なんぞはな 使わんためにあるねんで


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 尊者こそ「本当は使える」。だが使わなかった

尊者、第三の眼
 尊者渋い…、アルダナリーシュヴァラの行動
 これは、煎じ詰めれば「素人政治」
 理想主義

 正し過ぎて独善的、恐怖政治に走るもの

 純粋で、理想を持って政治をするも
 誰にも理想が届かない

 愚民を殺せ、と命じたのが最も端的か

 また“愚王”と切り捨てた同様

 賢いゆえ、愚かと思えるものを切り捨てる

 他人を信じず、恐怖政治に陥るのか

第45話
敗北の途端、孤立するアルダナリーシュヴァラ

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 アルダ=半身が、ナーリ=女性神の、イーシュヴァラ=シヴァ神

第45話「アルダナリーシュヴァラ」
 彼なりに、理想を以って悪王をコントロールした
 しかし、彼が敗北に転じた瞬間
 大臣たちも敵に

 曰く「彼こそ、先王を殺した主犯だ」と

 事実かは不明です
 要は、“こいつが悪人です!”とのなすりつけ

 独り、飛天が如く逃げる虚しさ…

 理想は、本当に誰にも届いていなかった

 土壇場で誰も味方しなかった。
 
 周りはみな愚か、と接してきたからでしょうか 
 
第46話
対面、先王を暗殺したのか?と玄策は問うも

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)アルダナリーシュヴァラ
 くッ くくくッ… 今さら何を気にする

 好きに想え異邦人

 汝らが望む物語を汝らの史書に記し
 史実と呼ぶがいい


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 史書は勝者が作るもの、…そのなんと哀れな事

第46話「好きに想え異邦人」
 きっと彼は、彼なりに苦労、宮廷を運営してきた
 理想は、誰も共有してはくれなかった
 他人は解ってくれなかった

 なら他人の評価に、今さら何の価値がある!

 歴史の敗者かもしれない
 でも、どんな悪口を書かれようが堪えない

 彼は理想を信じ、その点に後悔はない

 玄策こそ一度「捏造」した、なら今さら何だ?

 お前はその捏造で満足してろ

 好きに書け、私は知らん!的な

彼には彼の理想が。“先王の理想に近い”と自負

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 彼は「自負」する、だから好きに想われ構わない

「胎の主<ガルバパティ>」
 彼は両性具有、最期に“出産”し絶命します
 理想とは、天竺を一つにする事
 神話の昔からの悲願

 神話で別たれた民を、一つにする者だと

 両性具有、己の卵子に己で受精させ
 子を為したのでしょうか

 あの王の子…、とも思えないし

 彼の理想は、文字通り生まれる前に死す

 全ては「好きに想え」か。

民、止まらず! 王も大臣もブッ殺せコール!!

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 王妹殿下、華麗なるロイヤルマジボケ

ラージャシュリーの嘆願
 結局、罪をなすりつけようとした大臣たちも
 また、要は「運が良かっただけ」の王も
 まとめて処刑寸前

 人望ある先王妹に許され助命へ

 アルダナリーシュヴァラも
 思えば彼なりに、己を「天竺の自浄」と思ったか

 天竺統一へ、悪王アルジュナを利用した

 アルジュナはその自覚がなかった

 玄策が自戒し、欲をかかなかったのと好対

第47話
騒乱の死者達を、大河に流し弔う

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)先王妹ラージュシュリー
 死者の魂を送ると同時に
 悲しみ 怒り 憎しみ

 そういう思い… 業(カルマ)を水に流し

 天地に還すのです


 その時 人々は思い出すのです

 自らもまた
 許されて在るものだということを…

 そうしてまた 新たな循環(サンサーラ)が始まるのです


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 師仁はその「流し」を、美しいと思った

第47話「連合軍、解散」
 そして玄策は、伝えられて良かったというのです
 世の中、どんな手段でも伝えられない
 伝えようのない気持ちがある

 でも今回、玄策の気持ちは確かに共有された

 投獄組は全員が生存…!
 また「水に流す」のも、実に味わい深い

 死者を送るとき、抱く負の感情も流す

 その時「自分も同じように流して貰った」

 きっと生きる限り、憎まれない人間はいない

 でも生きてるなら、誰かが許してくれている

 許す、許される大切さか。

西暦647年11月、新政権樹立。大過なく治めた

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 そしてヤスミナこそ、後の妃だった!

縁あらば
 へえ! そんな風に、縁が繋がっているのか!
 同じく、縁あって出会ったロンツォン将軍
 ラトナ将軍とマーユと離別

 縁あらばまた会いましょう、ただ一言

 以降、消息が描かれない辺り
 潔さすら感じる別れ

 きっと故国で、戦闘民族し続けたのね

 最初から最後まで、無敵に素敵だった…

そして「縁が在る」のは意外に

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 実は奈良の薬師寺に!

ラストページへ
 玄策、成果は「精糖職人」を連れ帰った事
 これもやがて、日本に伝わったとして
 面白いのは「足跡」

 文字通り「足跡」が、現代日本に残ってる

 彼は、図像化された「釈尊の足跡」を転写
 唐へ持ち帰りました

 これが更に転写、玄策の名と共に収蔵

 縁あれば…、縁って面白すぎない!?

第48話
弟・玄廊は「海路」、スリランカ経由で帰国へ

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 目指すはシンハラ(スリランカ)よ!

第48話「王玄策、帰唐」
 唐と天竺は、一巻の通りエベレスト経由ッ!
 また、砂漠経由の迂回路があり
 今回「海路」を模索

 際し智岸と彼岸、唐を恨んでいたと明確に

 しかし、被害者は時に傲慢となり
 加害者になる事もある

 彼らは己が、被害者である事も戒めてた

 だから「その先に」

 そうした想いが、獄中でも皆を励ましたのね…

故郷を失い、道を知り、そして救われて

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 人は他者と関わり、“自己”を変転させる

色即是空
 であるなら不変の自己、というモノはない
 人だけでなく、万物がそうなのだ
 他者との「縁」で変わる

 変わらないモノ=実体、なんてない

 常に変わるモノ=「空」なのだ

「常」に変わらないものは「無い」
「縁」で変化してゆく

 だから宇宙も含め、一切が「空」なのだと

「空」とは、変化し続けること

 世界とは、変わり続ける活発的な存在なのだと
 
玄策、帰路へ
道中ヴィマル王子は、仏門を希望する

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 少しずつ別れていく人々、旅が終わってゆく…

ヴィマル(純粋の意味)
 作中、両親と似ても似つかないよう見えた王子
 しかし実は、あの両親だからこそ。
 愛されていたと知ります

 両親は確かに“愛し、善良に育てた”

 これも“縁による変化”
 息子にすれば、両親こそ変わった

 父たちは天竺王となり、変わってしまっていた

 育てていた頃、確かに二人は善良で

 地位が変えてしまった。

 なら自分も、変わる為に僧になるのか

第49話
唐に戻った玄策は、皇帝が長くないと察する

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 やがて則天武后が台頭、暗い時代

第49話「あの二人は帰れなかった」
 則天武后は芭蕉扇を持ち、羅刹女風に描写
 また、「史実通り」200歳の方士を連れ
 ナーラーヤナ・スヴァーミン
 唐住まいへ

 皇帝に取り入ろうとするも、先が長くない

 奇しくも天竺同様
 そして玄策、“国の自浄作用”を思います

 集権国家中国で、そんなモノ作用するか?

 暗い時代を示唆するのね…

第50話
智岸と彼岸は熱病で死亡、短い経を残した

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 二人の死を惜しむ三蔵法師…!

第50話「西暦658年 長安」
 彼らは与り知らぬ事、二人の死を弔って貰い
 際し、託した経典が現スマトラに伝わり
 仏教隆盛をもたらした

 彼らは死ぬも、巡り巡って仏教を豊かに…

 しかし一方で、彼らが思い描いた経は
 三蔵が翻訳したものと同じ
 自力で?!

 もし生きていれば、もっと…?

 本当に、人の死に良かった悪かったはない…

また生前、彼岸が「表音文字を作ろう」と提案

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 まるで「ひらがな」原型となったかのように

ひらがなは800年頃
 元々仏教は、表音文字で語られた思想
 そして、中国では表意文字
 両者は異なる

 なら両方を“混在させる言語”があれば…

 ただ、どんなに優れた表現があっても
 問題は知的好奇心

 知的好奇心が失せれば無意味

 日本人読者に向けられてて耳が痛い

 人間、死ぬまで学ばなきゃなぁ…

第51話【最終回】
十年が経ち、ヴィマルは義岸師となった

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)王玄策
 十年経ちゃあ
 十年くたびれるよ

 諸行は無常だ

 しかし 変わってゆくということは
 失ってゆくこととは違う


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)ナレーション
 王玄策

 アジア史に
 一瞬の眩い光芒を放ったその名は

 再び歴史の行間の中へ フェードアウトしてゆく

 彼は いつどこで どのように死んだのか
 彼の墓はどこにあるのか

 後世の者は誰も知らない


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 これもまた「好きに想え」か。

第51話「後世の者は誰も知らない【最終回】」
 十年後、玄策が三度目の天竺行きに際し
 ヴィマルに、帰国を誘って断わられ
 物語は閉幕へ

 彼が「グラサンの怪しい人」になるのはご愛嬌

 伊藤勢ファンサービス!
 とまれ、これほどの人物も歴史に消えていく

 歴史は残酷、そりゃ「好きに想え」と言いますわ

 彼も「語るに足りない人物」へ
 誰も知らず、しかし縁を通じ息衝いている

 足跡が、今も日本に残るように、と。

 砂糖も、下手したら日本に来る時節が変わってた

余談。
アルダナリーシュヴァラそっくりの「則天武后」

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 なお妖怪師匠、三蔵法師と良きケンカ友達に

則天武后
 一瞬、「赤子」が成長したかと思いましたが
 帰国時には、既に睥睨していましたし
 同一人物でもない

 なら彼女は、“同時多発的なモノ”

 第156ページ
 同時期に、似たような節目が訪れる

 中国版アルダナリーシュヴァラだった、と

 時代の節目、そのものの擬人化

 彼女ら自身に、その自覚はないでしょうが

あとがき
本作は「歴史事典」から始まった

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 曰く「あ」からめくってたら、王玄策を発見

あとがきと対談
 それが巡り巡って、こんな面白い作品に
 田中先生は、伊藤氏の作画と知識を
 伊藤氏も文章の美しさを

 お互い、もう褒める褒める! 仲良しか!

 また、ラトナ将軍は原作で男ですが
 女性名だそうな

 デヴィ夫人も「ラトナ」。で、膝を叩いたとか

 名君揃いの時代と、スッと出てくるのも凄い

 いやはや面白かった!

収録

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 彼の「中天竺行記」は、唐滅亡で喪失

 ヤングアニマルコミックス「天竺熱風録 6巻」。田中芳樹/伊藤勢
 月2刊 ヤングアニマル連載、白泉社発行。
 2019年7月(前巻2019年2月発売)

天竺熱風録【最終回】感想
 第41話「その勝利を『利』とするか」
 第42話「アレクサンドロスのペテン師」
 第43話「最も単純明快な現実」
 第44話「素人の政治ごっこ」
 第45話「アルダナリーシュヴァラ」
 第46話「好きに想え異邦人」
 第47話「連合軍、解散」
 第48話「王玄策、帰唐」
 第49話「あの二人は帰れなかった」
 第50話「西暦658年 長安」
 第51話「後世の者は誰も知らない【最終回】」
 田中芳樹&伊藤勢 あとがき
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※公式サブタイなし。便宜名です。


 天竺熱風録 1巻“ま、何とかするしかあるめえよ”
 天竺熱風録 2巻“かくの如く我 聞けり” 天竺脱獄録
 天竺熱風録 3巻“仮面の下”ネパール政情録
 天竺熱風録 4巻“寡兵の戦争”ヴリトラ激突録
 天竺熱風録 5巻“戦象攻略”悪王出撃録
 天竺熱風録 6巻【最終回】