公式サイト 田中芳樹/伊藤勢 漫画 天竺熱風録 3巻 感想 レビュー 考察 画像 内容 ネタバレあり 前巻はこちら
“第三国”を引っ張り出す体当たり外交、決闘、刺客との決着へ!!

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仲間を救う為に、いかにして他国に軍を出してもらうか? 難しい議題の外交に
 おそれながら! と慇懃無礼に単刀直入に切り込む王玄策!
 現場主義者おっそろしいなァ!

 また見所は矢張りラトナ女将軍と、巨漢ロンツォン将軍の一騎打ち!

見ろ、あれが男の背中だ…!
 安易に、「女をナメた巨漢がボコボコに…」なんてしない、両方が栄える名勝負!
 またネパールは、後にアジア全土が植民地化される中“凌いだ”国
 地理的、そして人のしたたかさが面白かった!

 待った待ったと、言葉で切りこむ王作、「政情」を考えるのが楽しすぎる巻!

仮面の男、その異形は想像通り気色悪いものだったけれど

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 驚かず頭突きした王玄策! 状況違やあ、仲良くなれたんでしょうか…

あらすじ
 時は七世紀、チャンダ・ムンダに襲撃を受けた玄策は、ネパール目前で死地に陥る
 しかし、国境紛争中のネパール部隊が現れ倒す事に成功
 首都カトマンドゥに入る事が出来た

 しかしネパールは、玄策らを、天竺に揺さぶりをかける大義名分に使おうとする

 彼らも、現・天竺政権は不利益なものと考えているのだ
 気付いた玄策は敢えて死地を選ぶ

 それは困るネパールに、玄策は破天荒な案を提案、天竺王都強襲決まる

兄を殺した王玄策を追い、暗殺者は“モティハリ要塞”へ入る

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 行く先々で馬を盗み、潰れるまで走らせては乗り換えてきたという

ティーラブクティ国“モティハリ要塞”
 何でも、馬が死ぬ度、その心臓を食っていたというのだからぞっとしますし
 王玄策らも捕らえ、生きながら心臓を食ってやるという
 どんだけ心臓好きなんだお前…

 またこのティー国は、天竺とネパールの中間に位置する

 目指すネパールは、山岳地帯の盆地にある国
 山だらけのど真ん中!

 対しティー国は、ネパールから平野に出る、「出口」にあたる要衝なのだ!

アジア植民地化時代、イギリスの侵略を打ち破った“小さな強国”

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 難攻不落の天空都市! わくわくしてくる単語だわ!!

天空の国ネパール
 王玄策らが目指す国は、道中、「豊穣の神ドゥルガーの眷属」がうようよしている!
 と言えばアレだが、要は悪性の疫病、マラリアがはびこっており
 現地は「神が、貢物を要求している」と捉えていた

 後に近代装備のイギリス軍さえ、疫病と、ネパール兵に侵略を諦めた程

 山岳地帯という特殊地形に長けた彼らは
 アジア各大国でも為す術なかった時代、見事に侵略者を撃退したという

 ネパールって、そんなとんでもねえ国だったのか…。

吊り橋の死闘! 思わぬ場所で、追撃戦となってしまった王玄策たち

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 壮大な石像! 釣り橋で馬ごと肩を射抜かれた王玄策

国境線を走れ!
 玄策も、こんなに早く追撃隊が来るのはおかしい、国境警備隊だろうと思いつつ逃走
 逃走を図るも、まず「無害な旅人」を装おうとする強かさは
 伊藤勢先生の真骨頂ですね!

 また後の場面曰く、この貫通力が、この辺りの弓矢が長じた点らしい

 落馬した玄策、咄嗟に「見捨てろ」と叫ぶ彼に
 迷わず置いていく蒋!

 この迷わなさ、“生きる事は生き残る事ではない”、彼ららしい即断即決!

見たな? 吊り橋を落とそうとした玄策は、“仮面”を弾く!!

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 他人の容姿に驚くなんざ 失礼だろ!(王玄策)

驚けや!
 異形の暗殺者、恐怖の正体! …に、びた一文驚かない王の胆力おかしい!!
 彼が「アナング・プジャリ」、異形を輩出する事もある一族なのだ
 と、事前に知ったのも大きいか

 彼らは矢張り、ベトちゃんドクちゃん同様の、結合双生児だったのだ

 ちなみに武田邦彦教授によれば
 このような双生児は、昔から見られた一種の風土病なのだという

 文字通り、二人が互いにめり込むような結合…!

王玄策『師仁ー! 後は頼んだぞー!!

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 ところがどっこい、助けが来た!

“前巻”出撃していた!
 実はこの地帯、ネパールとティーラブクティの国境にして紛争地だったのだ
 現代中国同様、ティーラ側は警告を無視して侵入し
 ネパール国境を圧迫していた

 あまつさえ、前述の要塞を建て、腰を据えて狩猟伐採採掘を。

 国境線の既成事実化を進め
 今回の件に至っては、石像の示すとおり、“山神の聖域”なのに暴れてたと判明

 まあ、女将軍さんも殺しとるけど!

恨み重なる暗殺者も、ネパール部隊に哀れなハリネズミに

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 その最期に、一刀を敢えて受けた王玄策。

チャンダ・ムンダの最期
 その見た目で差別され育ったのでしょう、結束は誰より強かった。
 怪物めいた「兄」も、彼らにとっては心を許せる人だった
 王が、仲間を思うのと一緒なのだと。

 死ぬ訳にはいかない、しかし王は、彼らの気持ちに共感したのか

 彼に「仇討ち」をさせた王
 今まさに、大事な連中の為に戦う王には、「身内の為の戦い」は他人事じゃない

 せめて、笑って逝かせた態度、本当に男だった…!

王は気付く、今やりあった連中は“現在の王様”出身地なのだと

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 その事でラトナ将軍、うっかり口を滑らせた!

天は二物を与えず
 ネパールと国境を争い、勝手に権利を主張するティーラブクティ国の王
 それが、現在“天竺王”となったアルジェナの政変
 ラトナも「政変」を知っていた

 天竺に向かう際、玄策らを歓待したネパールは、最初から知っていた

 政変で天竺はどう変わった?
 王玄策らに、何も言わず向かわせ、「天竺がどんな反応するか」様子を見ていた

 その可能性に思い至り、玄策は一気に怪しみ始めてしまう

脱出七日目、ネパールを象徴する大宮殿に通された玄策

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 カイラーサ・クータ宮殿、七階建ての壮麗な建物だったという

ネパール王都カトマンドゥ
 ご存知の通り、世界一の山であるヒマラヤは、元々は海の底だった
 隆起し、現在の形となった経緯から
 アンモナイトが多数産出

 彼らはヴィシュヌ神の聖石”と呼び、珍重したという

 玉座には特大のモノが!
 またこの宮殿、「隆起」による大地震によって倒壊してしまったらしい

 ともかく、ナレーンドラ国王に目通りは叶った! 

問題は身内を救う為、“第三国ネパール”に軍を借りる方策だが…?

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 ナレーンドラ王は苦労人、父王を殺害され、戦いの末に奪還した賢王という

悪王の正体
 まず推測、天竺の前王は、既得権益となり国政に欲を見せた「バラモン教」を疎んじ
 仏教を重視した為、逆恨みで暗殺されかけてしまい
 バラモン教団を放逐した

 しかしバラモン神官団は、前王の死去と共に、現王を担ぎだしたのだ

 辺境王アルジュナが、政権を取れたカラクリは分かった
 他にも怪しい女が味方してるようで…?

 バラモン教の失地回復政権なら、仏教迫害もあるかもしれない。

説得に2、3日はかかる」と、王玄策は考えていた。しかし。

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 王は「食事してくれ、その後に答えを出す」と返答した。つまり。

ネパール王国の思惑
 玄策は、王が既に「出兵するつもりだ」と看破し、頭をフル回転させる。
 一般的には、ネパールは彼らを殺害してしまった方がいい
 事故など幾らでも起こる時代だ

 だから蒋師仁は、「いつ暗殺されるか」と、ヒヤヒヤしてしまう

 しかし玄策、頭を回転させるべくモリモリ食うんだコレが!

ネパールの思惑、この事件は“大義名分”となるのだ

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 実際、ネパール王の側近たちは「唐なんざ無視しちまえ」といった

大義名分
 彼らに、天空都市カトマンドゥという、絶大な「地の利」あればこそだろう。
 しかしアルジュナ王政権は、ネパールに「害」だと分かった
 現在、国境紛争中の国の主だからだ

 また玄策らを投獄するなど、問答無用な上、バラモン教が担いでいる

 放置すれば“交易”が難しくなる
 山岳国家ネパールも、「平地への出口」を要塞で塞がれ、交易できなくなっては困る。

 今は、「中国に酷い事したね? 怒った!」と、大義名分がある!

王玄策に必要な事、ネパールに必要な事

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 ネパールが「七千で出兵する」と聞き、王玄策は「ならチベットに行く」と言いだした!

そうくるか!
 現在、天竺は悪王アルジュナを支持すべきかで揺れている、今は「好機」だ
 ネパール軍は、彼の政権が磐石となる前に
 軽くつつくだけのつもり

 そうすればやがて自壊する、最小のリスクで効果が期待できる

 アカンやん!
 王玄策は、アルジュナ王を倒し、仲間を救わねばアカンのや!!

 そこで王玄策は、「チベットにも応援を頼む」と言いだした

チベットへは悪路、道中、玄策が倒れれば“ネパールも困る”

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 ネパール王曰く、別の軍事協定の為に訪れていたチベット兵1200!

巨漢将軍ロンツォン・ツァンポ
 ネパールは、もし玄策が道中で倒れたら、「大義名分」を失って困ってしまう。
 しかし玄策は、さっきからあれこれと口を挟んでくる
 彼は意地でもチベットに行くだろう

 そこで駐留していたチベット兵に、協力を頼めないかと口ぞえに。

 チベットも、唐に恩を売る好機な上に
 天竺の発言力に関わる

 国許に使者を送りつつ、将軍の判断で、“実利”を求め参戦してくれる事に

軍は揃った、「第1巻冒頭」に繋がる無茶を言い出す玄策!

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 うーんこの信用しない視線、見え隠れする本音ホント好き。

断られました
 玄策も、ネパールとチベットが、「自分を大義名分にしてる」と解ってる。
 敵を刺激するだけに終わり、仲間を殺されたら堪らんので
 指揮に参加したいというのだ

 文官の彼が言うのだから、そりゃ誰もが「おい!」とツッコムむ始末!

 しかしネパールも負い目がある
 天竺に向かい、王玄策達がこの国を通過した時、「新政権はクソ」と気付いてた

 しかし口をつぐみ、“新政権の実情を探る人柱”に使ったのだから。

ゴネて「軍師」に命じられた玄策、ところが今度はチベット将軍が…

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 女将軍など信用できない、という、非常にシンプルなツッコミを受けるラトナ。

実力証明
 何せネパール7000、チベット1000、中国2名というバランスの良いパーティなので
 ネパールが、美しい王族という飾りだったらマジ困る!
 というチベット将軍

 なら戦って実力見せたらあ! と天下一武将会開催!!

 いやあ解りやすい!
 解りやすいけど、ロンツォン将軍がまた渋い人なんだ!!

 この人、象みたいな顔してるのに!

意外や、“油断していた”のはラトナ女将軍のほうだった

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 最大の予想外は、むしろチベット兵たちだよ!

嗚呼、褒め殺し
 当然ラトナ将軍は、そういう侮辱を幾度となく受け、またかという調子だったのでしょう
 しかしロンツォン、堅実にして技巧派で人情派という
 単に部下思いなだけだった!

 うちの大将も 武器を捨てるさ!(チベット兵)

 両者、技巧は互角!
 後は体力差、ラトナが武器を飛ばされた時、チベット兵から声が飛んだ!!

 部下の熱い信頼に泣きたそうな将軍、むしろ泣いていい!

ネパール王『(ロンツォン将軍…、なんだか、すまぬ!)』

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 師仁、よく見ておけ。あれが男の背中だ…(王玄策)。

男はつらいよ チベットの寅次郎
 ラトナvsロンツォン! 当初、「ネパールの小娘」と罵声をぶつけていたチベット兵も
 彼女に見惚れ、すっかりファンになってしまったのだった
 いやね、男子ってば単純で!

 結果、完全にヒール(悪役)となったロンツォン、ラトナに敗北を喫してしまう

 どころか、直参のチベット兵も「大将おめでとう!」と
 ラトナに向かって叫ぶ始末

 愚痴一つなく、夕陽に佇む男の姿。男一匹、ロンツォン将軍ここにあり…! 

知ってます奥様? ヒマラヤって火山活動がないんですって!!

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 通気性が良いくさりかたびらが発達し、弓矢も自然と「鋭く」発展した

貫通している時点で重傷です
 ヒマラヤは、二つの「プレート」がぶつかる事で、隆起して出来上がった山脈だ
 火山活動で隆起したわけじゃなく、したがって火山も存在しない
 なるほど!

 しかし温泉は多い、地下に下りた水が、マグマに加熱されて沸く為らしい

 温泉事情も色々なんですねえ。 

連合軍進発! しかし、問題が一つ。大問題があった

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 ここで冒頭、暗殺者が駆け込んだ要塞が活きて来るワケだ!

モティハリ要塞
 問題は、山岳盆地ネパール首都から、平地に降りるところの「要塞」。
 領有権を争い、道に「フタ」をしている悪徳要塞だ
 当然、要塞は守りが高い

 敵は6000、こっちは8000、守りを固められたら勝てない!

 おまけに、天竺本城から援軍が押し寄せたなら
 撤退せざるを得ない。

 この戦は不利、だからこそ「突くだけにしよう」、とネパールは考えていた。

王玄策は進言する、“天竺首都”へ直接侵攻しかない!と

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 ネパール王が鎧を用意してくれたのは、「人柱」にしてしまった謝意を込めて。

おおぞらをとぶ
 すなわち、平地に降りずに山岳を突っ切り、直接王都へ進軍するのである!
 これは、「山の険しさ」を肌身で知っているネパール人には
 到底考え付かないこと

 しかし山岳戦に長けた彼らだからこそ、こんな無茶が可能なのだ!

 第3者の玄策だから考え付いた。
 地元の猟師にも話を聞き、「要塞を攻めるより、有益な戦法だ」と承認を得る 

 次巻、険しいシワリーク山脈に何を見る!

収録

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 出兵! いよいよ決戦近し…?

 ヤングアニマルコミックス「天竺熱風録 3巻」。田中芳樹/伊藤勢
 月2刊 ヤングアニマル連載、白泉社発行。
 2018年2月(前巻2017年9月発売)

収録
 第16話
 第17話
 第18話
 第19話
 第20話
 第21話
 第22話
 第23話


 天竺熱風録 1巻“ま、何とかするしかあるめえよ” 中国・インドを3往復した男!
 天竺熱風録 2巻“かくの如く我 聞けり” 天竺脱獄録!
 天竺熱風録 3巻“仮面の下”ネパール政情録!